東京キララ社オフィシャルコラム

辻幸雄コラム

辻幸雄

藤井良樹

PROFILE

辻幸雄
1949年10月、岐阜市生まれ。 高校卒業後、地元消防本部勤務。10年ほどで退職後、消防設備業・風俗営業等を経営。 ブルセラショップを立ち上げ、1993年、数百人の現役女子高生をビデオ出演させたとして、職業安定法違反で逮捕。 メディアにより大々的に取り上げられ、社会問題化した。出所直後からビデオ制作再開。以降、逮捕・服役を繰り返し、猥褻界の「帝王」として多くの伝説を残し続けている。

藤井良樹
ルポライター/漫画原作者/編集プロデュース。
■漫画原作『TWO突風!』『ガキ警察』(漫画/旭凛太郎 )
■著書『女子高生はなぜ下着を売ったのか』『キャバ嬢「給与明細」のヒミツ』『新世紀のリアル』(宮台真司・中森明夫共著)
■編集企画/『プリズン・ガール』(有村朋美)『ファイト!』(武田麻弓)、など。

はじめに

July 7. 2014 09:07 AM

藤井良樹

 
 これより、前科十六犯・刑務所収監九回を数える稀代の犯罪者、ブルセラ・ハメ撮り・猥褻の帝王と呼ばれた男――辻幸雄の伝記を記したいと思います。
 
 私が初めて辻幸雄に会ったとき、彼はすでに四度、刑務所へ入っていました。
 そして出会って四カ月後、辻幸雄は社会的事件となった「ブルセラ女子高生110人本番裏ビデオ事件」にて逮捕され、”ブルセラの帝王”として大きく世間を震撼させました。
 その五度目の刑務所行きまでの四カ月間、私は辻幸雄の「犯罪現場」を何度も取材しました。
 それから現在に至るまで、辻はさらに五回逮捕され、四度刑務所へ入っています。
 逮捕合計十回、刑務所収監九回になります。
 私が出会ってからの二十年間のおよそ半分近くを辻幸雄は塀の中で過ごしています。
 私はその逮捕の要因となったすべての事件について取材しました。
 いったい果たして辻幸雄とは如何なる人物なのでしょうか?
 
 特殊漫画家・根本敬氏は、こう言います。
 
 「辻幸雄は癒し系の奥崎謙三です」
 
 そして同時に、この言葉を続けます。
 
 「国民的英雄・長嶋茂男に酷似した天性の明るさも持つ人間空気清浄器、それが辻さんなんだよねえ」
 ――と。
 
 
 歌人・枡野浩一氏はこう語ります。
 
 「辻さんは嘘を一切言わないんですよ。辻さんの犯罪やなんかについて誰かが何かを語ったとき、少しでも間違いがあれば瞬時に”それは違います、それはですねぇ…”と具体的な話を始めるんです。犯罪者系の人は虚言の人が多いようですけど辻さんは真逆、本当のことしか言わない。だから九回も刑務所に入ってしまうのかもしれないですけど……。あとそんなに刑務所に入っているのに息子さんや娘さんから愛されてるのは個人的にとても羨ましいです」
 
 
 また、プロレス・格闘技ライターであり、辻幸雄の逮捕時に拘置所へ面会へも行った須山浩継氏はこう分析されます。
 
 「普通ね、猥褻関連で何度も何度も刑務所に入ってしまう人って、ある種の”病気”だと思うわけですよ。でも辻さん本人に会ってみると全然”病気”じゃないわけ。商売の才覚もあるし、人間関係もきちんと作れる。じゃあなぜ何度も何度も平然と逮捕され、何度も何度も塀の中へ落ちるのか? 不思議なんじゃよなあ。でもよく考えたら、これはもうエロを突き詰めた”思想”なんじゃないかと」
 
「私はプロレス・格闘技に長年関わっておりますけれど、レスラーや格闘家・武道家の中にはごくまれにこれらを思想の域にまで高めてしまう人がいます。さらに、その中でごくごくまれに武道家などで物凄い次元に行っちゃう人がいる。そういう人は……もうねえ、凄すぎて道場も開けない、弟子もとれないレベルなんです。辻さんはそれに一番近いのかもしれません」
 
 
 そして、イラク紛争地帯やカンボジア少女買春地帯などを取材するライター・石原行雄氏は、こう評します。
 
 「辻幸雄に必要なのは、ハメ撮り相手の女だけです。法の庇護さえ要しない。辻幸雄は孤立無援の一匹狼、本物のリアルインディーズだと思います」
 
 
 しかし、辻幸雄は今の日本国で世間からは忌み嫌われ、糾弾される、稀代の犯罪者でもあります。
 怪物犯罪者とすら断言してもいいかもしれません。
 初めての逮捕―起訴―刑務所収監はわずか懲役四カ月の道路交通法違反ですが、二度目の逮捕である岐阜県岐阜市においてのホテトル経営――売春防止法違反で逮捕の際は「日本最大のホテトル摘発される」と新聞朝刊社会面に七段組みの記事になっています。
 以後、「女子高生ブルセラビデオ事件」「ハメ撮り裏ビデオ事件」「ブログ無修正猥褻画像開示事件」「ハプバー公然ワイセツ幇助事件」と、起こした犯罪のほぼ全てが大きくマスコミ報道され、物議をかもしました。
 特に「女子高生ブルセラ事件」においては”ブルセラ”という言葉を世に知らしめ、広めただけでなく、幼き十八歳未満の少女たちとのセックスを一切の修正なく収めたその映像は裏ビデオ/DVDとなって流出/流通し、ある時期の裏ビデオ業界では「有名AV女優」「レイプ」「SM」「素人」などと共に「辻幸雄」という個人名がひとつのジャンルになっている有様でした。一説によれば、”辻幸雄ブルセラ女子高生裏ビデオ”は累計百万枚を売り上げたといいます。
 ”ブルセラの帝王”という異名はこの時代にまさに冠されたものでした。
 
 ただし、勝手にダビングされ、裏で販売された裏ビデオゆえに、辻幸雄本人には一銭も入っていません。得をしたのは、少女無償修正裏ビデオを売りまくった裏社会の人間たちだけです。でもこれは結果的には辻が裏社会の利益に大いなる貢献を果たしたと言えるわけで、彼が幾ら利益を得ていないとはいえ、彼の”罪”を減免するものではないとも思えます。
 
 そうして、こうした、普通の女子高生――少女――を平然と裏ビデオ女優にしてしまった辻幸雄の出現により九十年代の日本には未成年少女を出演させた非合法ポルノがある種のブームとなり、辻フォロワーともいえる数々の「援交ビデオ」を生み出すことにもなります。その結果、日本は全世界より”少女ポルノ大国”とみなされるようになり、国際社会からの強い批判を受ける事態にまで発展したほどです。
 事実、累計にしておよそ千人近い18歳未満の少女――女子高生や女子中学生たちが、辻幸雄によって使用済みパンツや制服などを売らされ、パンチラや下着姿や裸や性器を撮影され、ブルセラビデオ、ハメ撮り本番裏ビデオに出演させられました。
 それは強制でなく、少女たち自身の意志を伴うものではありました。
 だが、法律的には明確すぎる違法行為であり、現に辻幸雄は何度も何度も罰せられ、塀の中に落ちています。
 しかし、辻幸雄は逮捕のたびに、広くマスコミに向けて、狭い留置所や拘置所の中で、あるいは裁判所の法廷で、辻本人にしか吐けないであろう”名言=迷言”を残してもいます。それを「名言」ととるか、「迷言」とみるか、「妄言」とするかは、大いに見解の分かれるところではあるでしょうが。
 
 <ブルセラ女子高生110人本番裏ビデオ事件>のとき、辻幸雄は玉川警察署の留置所で、面会に行った私に、こう言い放ちました。
 
「ハイリスク・ハイリターンを目指したんですけどねえ、ハイリスク・ローリターンでした」
 
 二度目のブルセラビデオ事件の際には東京地方裁判所の法廷で裁判長が「あなたは十六歳、十七歳の女子高校生の少女たちを裏ビデオに出演させたことをどう考えていますか?」と問うたことに対し、こう述べました。
 
 「あのですねえ、法律的には児童福祉法は十八歳未満が対象ですが、私は十六歳以上は大人だと思うんです、ええ。私の中の児童福祉法は十五歳未満です」
 
 情状酌量を訴えるわけでなく、同情を買うわけでもなく、自らの考えと日本国の法律のズレ――永遠のわかりあえなさ――をあっさりと吐露する辻の発言に、裁判所は凍りつきました。
 
 さらに、インターネット上に開設したブログでの無修正DVDの展示・販売により9度目の逮捕をされた際には、「ブルセラ・ハメ撮りの帝王の呆れた発言」として、逮捕後に発したこんな言葉が大きく報道されました。
 
 「猥褻のどこが悪い。またやります」
 
 そして、その後、まるでその言葉通りに、<公然猥褻幇助罪>にて10度目の逮捕となります。
 そしてそのときもまた、七色に染め上げた髪の毛で笑顔で手錠を嵌められて連行される辻幸雄の姿が全国ニュースの電波に乗り、世間に衝撃と失笑を与えたのでした。
 
 辻幸雄本人は自らの罪についてこう語っています。
 
 「私は9回刑務所に入りましたが、今はシャバにいます。日本でよかったですよ。私がアメリカに生まれてたら懲役四百年とかくらって一生塀の中でしょうから。もし社会主義国だったら? 即死刑でしょう。ええ、ええ」
 
 それでは、そんな”辻さん伝”をこれから始めます。
 まずは辻幸雄逮捕服役年表から。

 
 
<辻幸雄逮捕服役年表>
 
◆ホテトルの帝王時代◆
①1985年 道路交通法違反にて逮捕・起訴され懲役四カ月。
岐阜刑務所にて服役。
②1987年 岐阜県岐阜市でのホテトル経営により売春防止法・周旋および契約の罪にて逮捕・起訴され懲役一年二カ月。「日本最大のホテトル業者摘発される」と大きく報道される。三重刑務所にて服役。
③1988年 岐阜県岐阜市でのホテトル経営により再び売春防止法・周旋契約違反で逮捕・起訴され懲役一年十カ月。名古屋刑務所にて服役。
 
◆ブルセラの帝王時代◆
④1991年 東京・日本橋/西日暮里での「使用済み下着・制服販売店」での「パンツ着用証明ビデオ」の撮影により<猥褻物図画販売目的所持>の罪にて逮捕・起訴され懲役一年四カ月。長野刑務所にて服役。
⑤1993年 東京・渋谷/玉川での女子高生を出演させてのブルセラビデオ撮影/販売により<職業安定法違反・有害業務斡旋の罪>および<児童福祉法違反>にて逮捕され、職業安定法違反のみ起訴となり、懲役二年六カ月。この事件は「ブルセラ本番ビデオに女子高生110人出演」と大ニュースとなり、”ブルセラ女子高生ブーム”や”ブルセラ論争”が勃発、”辻幸雄=ブルセラの帝王”の異名を得ることになる。網走刑務所にて服役。
⑥1996年 東京・新宿での女子中学生を出演させてのブルセラビデオ撮影により再び<猥褻物頒布>および<職業安定法違反・有害業務斡旋>の罪にて逮捕・起訴され懲役二年六カ月。「ブルセラの帝王、出所半年で逮捕」と再び大きく報道される。甲府刑務所にて服役。
 
◆ハメ撮りの帝王時代◆
⑦2000年 東京・綾瀬での無修正本番ビデオの制作販売により<猥褻物図画販売目的所持>の罪にて逮捕・起訴され懲役一年四カ月。この際には「”ハメ撮りの帝王”またまた逮捕」とまたまたマスコミを賑わす。札幌刑務所にて服役。
⑧2004年 東京・南千住での美容院での髪染め料金で揉め、店前でホームレス男性二人を雇ってプラカードとビラによる抗議行動をしたため刑法230条・名誉棄損罪で逮捕され略式起訴で簡易裁判所で罰金30万円。控訴し地方裁判所で20万円の罰金処分決定。
 
◆猥褻の帝王時代◆
⑨2005年 インターネット上に開設したブログでの無修正DVDの展示・販売により、刑法175条わいせつ物頒布罪・わいせつ物陳列罪・わいせつ物販売目的所持罪/児童ポルノ禁止法・販売目的所持罪/職業安定法・有害募集罪で逮捕され、わいせつ物頒布罪のみ起訴される。懲役三年六カ月。逮捕時の発言「猥褻のどこが悪い。またやります」が大きく報道され、大いに顰蹙を買う。広島刑務所にて服役。
⑩2009年 東京・浅草でのハプニング・バー経営により刑法174条公然わいせつ罪・わいせつ幇助で逮捕・起訴され懲役三カ月。「”ブルセラ・ハメ撮り・猥褻の帝王”が今度はハプバーで逮捕」とフジテレビがスクープ報道し、七色に染め上げた頭髪で満面の笑みのまま手錠をかけられた姿が全国ニュースに流れ、話題となる。東京拘置所にて服役。
 
次回【第1回】ブルセラの帝王 <黎明期編 その1> 近日更新!!

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